夏と原稿用紙

by Foilverb×中路もとめ

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about

恋願い、想い描く

最初は数行の、ほんの数行の言葉だった。
小説を書くことが趣味の高校一年生、大村歌音。
文芸部のない高校で一人密かに創作に明け暮れていた彼女は、
同じように一人「曲作り」を趣味とする諫早詩織と出会う。

毎日のように彼女と語り合い、それぞれの活動を続ける毎日。
その中で彼女は、自分の中に生まれたある感情に、戸惑いを感じていた。

Tokyo Audio Waffleの中路もとめと、Last Parade RecordsのFoilverbがお送りする、
二人の少女の物語を描くコンセプトアルバム。涼しげなサウンドをバックに、
砂糖子演じる「歌音」の視点から独白・ストーリーテリングによって
語られる物語をお楽しみ下さい。

er0003.tumblr.com

credits

released August 31, 2015

Composer 中路もとめ
Composer Foilverb
Voice 砂糖子
Vocal(Tr.6) 朝香智子
llustrator 桜上水モリト
Designer 大瀧翼

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license

all rights reserved
Track Name: アイスコーヒーと平凡
ゆっくりとコーヒーが落ちる
氷を溶かしながら ゆっくりと ゆっくりと
コンビニのコーヒーメーカーを見つめ続ける彼女の
横顔をずっと見ていた

「どうしたの?」と独り言みたいに呟く
その問いかけに「別に」と返事をする なんとなく目を反らす
コンビニの外は暑そうだ 熱を持った私の感情と 常に眠たそうな彼女の瞳
ガラス扉一枚の温度差に 溜息が漏れる

高校生になってから書き始めた短編小説は
完成を間近にしてもタイトルを決められずにいた
欠落したピースは白々しく 私の中のゴールを
あやふやでふわふわした形のないものにしていた

誤魔化し 茶化し 日常はループする
私の真ん中にある小さな感情は名前すら付けられず
産み落とされず 眠り続けているのだろう
あるいは しっかりとした「意味」がまだそこにないのかもしれない

学校であったことをなんとなく話し 何度となく通った道を行く
なんでもないことをキャッチボールするうちに
何気ないテーマとして 彼女は物語の進展を問う  
遠くを望むような深い瞳 吸い込まれると言うより 沈む 
溺れるように見とれて私はすこしだけこわばった口を開ける

「わるくはないよ」とちょっと強がった
彼女は音楽 私は小説 それぞれの創作活動に張り合うべきものはない
そのはずなのに私は怠慢を咎められているような気持になる。
パズルのピースが一つ見つからない そんな不安感 物足りなさ

「そっか」彼女は気怠く口笛を吹く アスファルトに反射する日差しと足音 
後何回聴けば 私は見つけられるのだろう 
自分の中に眠るこの感情に気付くのは少し後 
でもその日は近いと確信めいたものを持って
今日も私達は二人で居る
Track Name: 風鈴と心配性
エアコンをつけるか迷った夕方。開けた窓に風が迷い込む
視線を移した数秒間 君の視線が私とぶつかる
風の音は弱く響いて 空気が少し張りつめた
でも、たったそれだけ とくになにもなくて

秘密を胸にしまうのは大変だ
二人きりだとその小さな亀裂を指でなぞってしまう
イヤフォンから漏れ出る旋律は、私のことを励ますように
でもそれもきっと私の勝手な解釈に違いない
風鈴の音は淡々と 淡々と鳴っていた

いつからだろう?  君の ことが羨ましいんだ
不安定な私を 笑い飛ばして 茶化して ねぇ
見えない何か 遠く私の 核心避けて 
「まだ届かないで」 願う 胸の奥


「伝わらないのは言葉にしないから」
それを一番知っている はずなのに
私の不安は累乗して膨らむ 形状すら崩れる
溢れ出てしまいそうな感情の名前……「あのね、私」
オレンジ色の部屋 君と向かい合う時間 静寂は甘く愛おしい

不思議そうな君と戸惑う私
止まる旋律 時計の針 ほら 制限時間が迫る
原稿用紙が背負った十字 先延ばしになる私の勇気 
世界は 距離感だけを差し置いて夏を奏でている


私の中に生まれた欲望は刻まれ 混ざり 文字になる
その中に君が居る そのことを君は多分知らない 知って欲しくない
原稿用紙を書いては消して 一行ずつ進めるようなもどかしさ
濁った頭の空気を入れ換えるように 小さな歌声が反響した

それは
いつからだろう?  君の ことが羨ましいんだ
不安定な私を 笑い飛ばして 茶化して ねぇ
見えない何か 遠く私の 核心避けて 
「まだ届かないで」 願う 胸の奥
Track Name: 鼓動と花火
祭りの夜は思ったより涼しかった
彼女と初めて過ごす夏はあっという間で 楽しい それにつきる
完成した小説のお祝いにと 林檎飴を渡された
花火までの数十分 話題が尽きる度に囓って 小さな世界が崩れるのを眺めた

お互いの浴衣をからかって 気合いを入れすぎたと笑い合って
私が彼女のことを沢山知ったように 彼女も私のことを知った夏
語り尽くしてもなお 本当に言 いたいことは心の真ん中に居座ったまんまだ

花火までもうすぐ 人混みの中 いつもの眠たげな顔は何処へやら
こんなに楽しそうな顔は初めて見る 「楽しそうだね」「花火、好きなんだ」
知らない表情で、いつものようにはにかんで笑う
花火の光が彼女を彩る 刹那 抑えきれない想いが零れた

君に出会って私は変われた いろんなものを持っている君のことが羨ましくて
大好きで 変だってことは分かってる でも 一緒にいると楽しくて 
時間を忘れてそれが心地よくて 会えない日がしんどくて 
ずっとそうなの 出会ったときからずっとずっと 
好き 
君のことが好き

声は花火で掻き消されて 爆音の後の沈黙 耐えきれず逃げ出した
人の波から遠ざかる街の外れ 明日からどんな顔で会えばいいんだろう
途方に暮れる

ふいに 私を呼ぶ声 遠くで響く花火をBGMに向かい合う二人
何も言えずに立ちつくし やっと出た「ごめん」は最悪のトーンで鳴った
ゆっくりと抱き寄せられる 冷たい腕に冷まされるように私の感情はほどけ
溢れ出し 涙が落ちる

「言って 全部きく 全部きかせて」その瞳に見つめられて嘘はつけない
一つ一つ彼女に伝える 大好きだと ただただ「君のことが好きだ」と言うことを 
沢山の言葉にして一つずつ プレゼントをラッピングするような気持ちで丁寧に丁寧に
全てを聞き終わった彼女は頷き 腕により一層力を入れながら呟いた
「ありがとう ごめんね」

君に出会って私は変われた いろんなものを持っている君のことが羨ましくて
大好きで 変だってことは分かってる でも 一緒にいると楽しくて 
時間を忘れてそれが心地よくて 会えない日がしんどくて 
ずっとそうなの 出会ったときからずっとずっと どんどん 私の中で大きくなってく

好き 
君のことが好き
綺麗な言葉で飾れないぐらい君のことが好き
多分誰よりも 絶対に 誰よりも
Track Name: 空と二人
本物の決意の前で私は唇を噛む
時計の針が動くように 私の全てを私は受け止めようと思った
例え嫌いになっても 例え彼女が違う人間に見えようとも
それでも私は彼女のそばに居たいんだと そう思ったからだ

エゴが加速する 彼女は私のことを「羨ましい」と言った
何もなくとも 自分の力で歩き出せることが羨ましいと
「私は流されるままに でもきっと悪くない方に
 ただ周りに合わせたいという理由で 選択肢を選んできたから」

いつだってそれを負い目に 自分というモノを恐れて生きてきた
自分が好きなモノでさえ 本当に好きなのか分からず
音楽の旋律にすがるように生きてきたのだと 彼女は語る

「私が人に聴いて貰いたくって曲を作るようになったのは君がいたから」
そんな告白めいた 見ようによってはキザな台詞に私は笑いながら泣きそうだった

いつだって私達は絡まってばかりかと思えば
噛み合いすぎて 動けずにいたのかも知れない

涙が落ちて 心が疾走する
どこまでもすり減らず 突き抜けそうな晴天の空
これ以上ない最大のありがとうを込めて抱きしめる
君がそうしてくれたから そうするべきだと思った

「バカ それって相思相愛ってことじゃん」
「そうかも」
「そうだよ」
下らなくて最高の気分だった。
引力のように 運命のように ロマンチックでむず痒いこの感情
言葉にするならばそう

それは、「恋」に他ならない
Track Name: 「恋」
もう泣かないで 潤む瞳
映る 戸惑いを 知らずにいた
ねぇ

いつも 隣 でも
気持ち だけじゃ 足りない

言葉にできない まだ
私 君


いつも同じ場所 隠す台詞
君の 戸惑いは 私のせいだね 

いつか 終わる 日が
来ると 思う それでも

あのね ありがとう そう
ありがとう